新春の風物詩であり、学生長距離界最大のビッグイベントである「箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)」。秋の出雲駅伝、全日本大学駅伝と続く「学生三大駅伝」の集大成として、全国のファンを熱狂させる舞台です。
「今大会の箱根駅伝で注目すべきエースランナーは誰?」「青山学院・駒澤・國學院の3強の戦力差はどうなっている?」「花の2区や山上り5区の注目選手を知りたい!」という駅伝ファンや陸上ファンに向けて、本記事では **今大会の箱根路を駆ける注目ランナー、強豪校の戦力比較、10000m自己ベスト一覧表、主要区間のエントリー予想 ** までを徹底的に解説します!
【完全予習】今大会の箱根駅伝 注目3大ハイライト
- ① 覇権を争う「3強」激突:王者奪還を期す青山学院大、世界基準のスピードを誇る駒澤大、出雲駅伝を制して勢いに乗る國學院大の三つ巴による激しい優勝争い
- ② 花の2区エース対決:黒田朝日(青山学院大)や佐藤圭汰(駒澤大)、平林清澄(國學院大)ら、10000m 27分台〜28分一桁を持つ世代屈指のトップランナーによる異次元の直接対決
- ③ 山を制する者が箱根を制す:往路の勝敗を決定づける過酷な「山上り5区」と、芦ノ湖から急降下する「山下り6区」のスペシャリストたちの激走
まずは、出雲・全日本から箱根へと続く今季の勢力図と、優勝を左右する見どころから整理していきましょう!
箱根駅伝(学生三大駅伝)の見どころと今大会の注目ポイント
大学駅伝シーズンは、10月の「出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)」で幕を開け、11月の「全日本大学駅伝対校選手権大会(全日本大学駅伝)」を経て、新春の「箱根駅伝」で最高潮を迎えます。この3つの大会は「学生三大駅伝」と称され、各大学が1年間かけてチームを強化してきた成果を競い合います。
なかでも箱根駅伝は、東京・大手町から神奈川・箱根・芦ノ湖までの往復10区間・合計217.1kmという長丁場で争われる世界最大規模の駅伝競走です。1区間平均20kmを超えるハーフマラソン並みのロード適性、アップダウンへの適応力、寒暖差や風などの気象条件、そして10区間全員の総合力が試される極めて過酷なレースです。
出雲駅伝・全日本大学駅伝からの流れと箱根での勢力図
学生三大駅伝は、それぞれ異なるレース特性を持っています。
- 出雲駅伝(全6区間・45.1km):最も距離が短く、スピード自慢のランナーが揃う「スピード駅伝」。トラック1500m〜5000mの走力が直結し、序盤の出遅れが致命傷になります。
- 全日本大学駅伝(全8区間・106.8km):中盤から後半にかけて区間距離が伸び、7区(17.6km)や8区(19.7km)に各校のエース級が投入される「スピードと総合力のバランス駅伝」。伊勢路の気候と中長距離の走破力が問われます。
- 箱根駅伝(全10区間・217.1km):全区間が20km超の本格的ロードレース。「山上り」「山下り」という特殊区間が存在し、単なるトラックの持ちタイムだけでは測れない「ロード力」「精神力」「選手層の厚み(10人の総合力)」が勝敗を分けます。
今季の大学長距離界は、出雲・全日本での激闘を通じて、優勝候補の筆頭として「青山学院大学」「駒澤大学」「國學院大學」の3校が群を抜いた強さを見せており、駅伝ファンの間では「3強時代」と位置づけられています。
出雲駅伝で勝負強さを発揮した國學院大が勢いをつければ、トラックのスピード記録で圧倒する駒澤大が全日本や箱根での雪辱を期し、さらに箱根の勝ち方を熟知する王者・青山学院大が盤石のロード力で連覇・王座防衛を狙うという、緊迫した三つ巴の構図が形成されています。
優勝候補「3強」の戦力分析とシード権争いの行方
優勝争いを繰り広げる「3強」と、それを追うシード権(10位以内)争いのグループは、それぞれ明確な特徴と強みを持っています。
| 大学名 | チームスローガン・特徴 | 主な主力・注目選手 | 戦力総合評価 |
|---|---|---|---|
| 青山学院大学 | 圧倒的な選手層とロード適性。大舞台での勝負強さと快走ピーキング | 黒田朝日、太田蒼生、折田壮太、鶴川正也 | 総合力:S+ ロード適性:極めて高い |
| 駒澤大学 | 世界水準の絶対的スピードエースと、鍛え抜かれた中間層の分厚い布陣 | 佐藤圭汰、篠原倖太朗、伊藤蒼唯、山川拓馬 | 総合力:S+ スピード力:学生随一 |
| 國學院大學 | 出雲制覇の勢いと高い駅伝力。マラソン実績を持つ絶対的エースと充実の主軸 | 平林清澄、青木瑠郁、野中恒亨、上原琉翔 | 総合力:S 安定感:トップクラス |
| 早稲田大学 | 少数精鋭のエース陣が強力。序盤区間で上位に食い込み上位進出を狙う | 山口智規、伊藤大志、工藤慎作 | 総合力:A 往路突破力あり |
| 城西大学 | 留学生エースの爆発力と日本人主軸のタイム底上げで表彰台を狙う | ヴィクター・キムタイ、斎藤将也 | 総合力:A 爆発力:上位級 |
| 創価大学 | 山上り経験者と安定した留学生・日本人主力の融合による堅実な駅伝 | 吉田響、スティーブン・ムチーニ、小池莉希 | 総合力:A 特殊区間に強み |
| 中央大学 | スピードとタレント力は世代トップクラス。体調管理と万全の調整で上位奪還へ | 吉居駿恭、柴田大地、本間颯 | 総合力:A 爆発力:S級 |
| 東洋大学 | 「その1秒をけずりだせ」の伝統。鉄紺の粘り強い走りでシード権を死守 | 石田洸介、梅崎蓮、小林亮太 | 総合力:B+ 粘り強さ:屈指 |
3強の優勝争いに加え、上位校と予選会突破校による「シード権(10位以内)」をめぐるサバイバル戦も熾烈を極めます。1秒の差が翌年の本戦出場権を左右する箱根駅伝ならではの緊迫感は、第1区から最終10区のフィニッシュまで途切れることがありません。
【強豪大学別】箱根路を駆ける注目ランナー&エース選手一覧
今大会の箱根路を彩る強豪各校の看板ランナーたちを、大学別に詳しく見ていきましょう。
青山学院大学:黒田朝日・太田蒼生・折田壮太ら圧倒的な選手層
箱根駅伝で数々の栄光を築き上げてきた青山学院大学は、今大会も長距離界屈指の選手層を誇ります。原晋監督のもとでロード適性と勝負勘を極限まで高めたランナーたちが揃っています。
その筆頭が、学生長距離界の絶対的エースへと成長した ** 黒田朝日(くろだ あさひ)選手 ** です。3000m障害(3000mSC)で日本歴代2位(8分15秒62)の記録を持つ規格外のフィジカルと心肺機能を備え、前回大会では「花の2区」で鮮烈な区間賞を獲得。上り坂での推進力、後半の失速しない粘り強さ、そしてロードでのレース展開を支配するクレバーさは学生界ナンバーワンとの呼び声が高いランナーです。
そして、大舞台で無類の強さを発揮する「駅伝男」が ** 太田蒼生(おおた あおい)選手 ** です。箱根駅伝では過去複数回にわたり主要区間(3区など)で他校のエースと壮絶なデッドヒートを演じ、並走した相手をことごとく突き放して区間記録・区間賞を叩き出してきました。トラックのタイム以上にロードの本番レースで圧倒的な強さを誇る頼れる最上級生です。
さらに今季、大学駅伝界に衝撃を与えているのがルーキーの ** 折田壮太(おりた そうた)選手 ** です。高校時代に5000m高校歴代2位(13分28秒78)のタイムを記録し、鳴り物入りで青学大の門を叩いた逸材。トラックのスピードはもちろん、大学進学後も順調に走行距離を踏み、早くも1万mやロードでも非凡な才能を開花させています。
加えて、5000mで学生トップクラスの走力を持つ ** 鶴川正也(つるかわ まさや)選手 ** も万全のコンディションで駅伝シーズンを牽引。各学年にエース級がひしめく青山学院大の選手層は、他校にとって最大の脅威となっています。
※青山学院大学のスピードランナー・鶴川正也選手のこれまでの歩みや将来の進路情報については、こちらの詳細記事もあわせてご覧ください。
→ 【青学大】鶴川正也の進路は実業団のどこ?内定情報とこれまでの実績まとめ
駒澤大学:世界基準のスピードスター佐藤圭汰と盤石の主軸陣
学生三大駅伝の優勝常連校であり、大八木弘明総監督・藤田敦史監督の指導のもとで世界を目指すアスリートを育成する駒澤大学。その絶対的看板選手が ** 佐藤圭汰(さとう けいた)選手 ** です。
佐藤選手は、10000mでU20日本記録となる ** 27分28秒50 ** (学生歴代2位)、5000mでも日本歴代上位の13分09秒45を叩き出した、名実ともに世界基準のスピードスターです。高校時代から世代のトップを走り続け、大学でも出雲・全日本・箱根のすべてで衝撃的な区間新記録を打ち立ててきました。故障離脱を乗り越えて復調した今大会、箱根のどの区間にエントリーされるかは大会最大の注目ポイントです。
※駒澤大学を長年指導し、世界へ羽ばたくランナーを育て続ける大八木弘明総監督のプロフィールやご家族のエピソードについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
→ 【駒澤大】大八木弘明総監督のプロフィールと家族・名将エピソードまとめ
駒澤大の強さは、佐藤選手だけにとどまりません。主将としてチームを牽引する ** 篠原倖太朗(しのはら こうたろう)選手 ** は、10000m 27分38秒66を記録し、学生ハーフマラソン選手権でも優勝するなど、ロードとトラックの双方で学生トップの安定感を誇ります。
さらに、箱根6区の山下りで区間賞を獲得した実績を持つ ** 伊藤蒼唯(いとう あおい)選手 ** 、山上り5区や過酷な長距離区間で抜群の勝負強さを発揮する ** 山川拓馬(やまかわ たくま)選手 ** など、3年生・4年生の実力派ランナーが盤石の布陣を固めています。トラックの持ちタイム合計では学生界トップに君臨する駒澤大が、王座奪還に向けて虎視眈々と牙を研いでいます。
國學院大學:駅伝力を極めた強力布陣!青木瑠郁・野中恒亨ほか
悲願の箱根駅伝総合初優勝を狙う國學院大學は、前田康弘監督のもとで「駅伝力」「団結力」を徹底的に磨き上げ、三大駅伝の主役に躍り出ました。
チームの大黒柱として君臨するのが、主将の ** 平林清澄(ひらばやし きよと)選手 ** です。平林選手は初マラソンとなった大阪マラソンで ** 2時間06分18秒 ** という初マラソン日本最高記録・日本学生記録を樹立して優勝を果たした、日本マラソン界のホープ。10000mでも27分55秒15の自己ベストを持ち、ロードの長距離・タフなコンディションになればなるほど他を圧倒する無尽蔵のスタミナを誇ります。前回の箱根2区でも力走を見せた平林選手が、再び花の2区で他校のエースたちを迎え撃ちます。
そして、出雲駅伝や全日本大学駅伝で勝負を決める走りを披露してきたのが ** 青木瑠郁(あおき るい)選手 ** です。1年時から三大駅伝に出場し、冷静沈着なレース運びとラストスパートの切れ味でチームに流れを引き寄せるキーマンです。
さらに下級生からも、10000m 28分17秒98まで記録を伸ばした ** 野中恒亨(のなか つねゆき)選手 ** や、安定感抜群の ** 上原琉翔(うえはら りゅうと)選手 ** らが台頭。往路・復路ともに穴のない布陣が整っており、今大会の箱根路で歴史を塗り替える可能性を秘めています。
早稲田・城西・創価・中央・東洋など注目のエースランナーたち
3強を脅かす存在として、シード校各校にも全国区のエースランナーが揃っています。
- 早稲田大学:山口智規(やまぐち とものり)選手
10000mで27分55秒59の好タイムをマークし、早稲田のエースとして君臨。積極的なレース展開と単独走での強さに定評があり、往路の重要区間での快走が期待されます。主将の伊藤大志選手や山上り適性を持つ工藤慎作選手とともに、名門復活を期します。 - 城西大学:ヴィクター・キムタイ選手&斎藤将也(さいとう まさや)選手
キムタイ選手は10000m 27分23秒21という驚異的なスピードを誇る留学生ランナー。2区でのごぼう抜きが名物です。さらに日本人エースの斎藤選手も27分59秒68と27分台ランナーへと成長し、表彰台を射程に捉えています。 - 創価大学:吉田響(よしだ ひびき)選手
出雲駅伝5区で区間賞を獲得し、かつて箱根5区の山上りでも圧倒的な走りを見せたロードのスペシャリスト。激しいアップダウンを苦にしない無類の登坂力とスピードを兼ね備え、往路の順位変動の主役となる存在です。 - 中央大学:吉居駿恭(よしい しゅんすけ)選手
兄・大和選手とともに中央大の黄金期を支えてきたスピードランナー。10000m 28分01秒02を誇り、序盤のハイペース争いを恐れない積極果敢な走りで、チームの総合上位進出を狙います。 - 東洋大学:石田洸介(いしだ こうすけ)選手&梅崎蓮(うめざき れん)選手
高校時代に数々の日本記録を打ち立てた石田選手が最終学年を迎え、箱根路での集大成となる走りを誓います。2区で粘り強い走りを見せてきた梅崎選手とともに、鉄紺の伝統を繋ぎます。
※彼らトップランナーたちが歩んできた高校時代の実績や、世代の進路動向については、こちらのまとめ記事でも詳しく解説しています。
→ 注目高校生アスリートの進路まとめ!陸上長距離界の進路と大学動向
【徹底比較】注目ランナーの10000m公認自己ベスト記録一覧表
箱根駅伝の戦力を測るうえで、日本学生陸上競技連合(日本学連)等の公認記録である「10000m自己ベスト」は最も客観的な指標のひとつです。主要校の注目ランナーたちの公認タイムと実績を一覧表で比較してみましょう。
| 選手名 | 大学名 / 学年 | 10000m自己ベスト | 三大駅伝・主な実績 | 想定エントリー区間 |
|---|---|---|---|---|
| ヴィクター・キムタイ | 城西大学(3年) | 27分23秒21 | 全日本大学駅伝好走、日本インカレ上位入賞 | 2区(花の2区) |
| 佐藤圭汰 | 駒澤大学(3年) | 27分28秒50 | U20日本記録保持者、出雲・全日本・箱根で区間新多数 | 1区 / 2区 / 3区 |
| 篠原倖太朗 | 駒澤大学(4年) | 27分38秒66 | 箱根駅伝1区区間賞、学生ハーフマラソン優勝 | 1区 / 2区 |
| 平林清澄 | 國學院大學(4年) | 27分55秒15 | 大阪マラソン優勝(2時間06分18秒=初マラソン日本最高) | 2区(花の2区) |
| 山口智規 | 早稲田大学(3年) | 27分55秒59 | 早稲田エース、箱根2区出走、出雲・全日本好走 | 2区(花の2区) |
| 斎藤将也 | 城西大学(3年) | 27分59秒68 | 日本人エースとして城西躍進を牽引、箱根3区出走 | 1区 / 3区 |
| 吉居駿恭 | 中央大学(3年) | 28分01秒02 | 箱根駅伝区間上位、出雲・全日本で主要区間を担当 | 1区 / 3区 |
| 吉田響 | 創価大学(4年) | 28分12秒01 | 出雲5区区間賞、箱根5区山上り実績 | 5区(山上り)/ 2区 |
| 黒田朝日 | 青山学院大学(3年) | 28分15秒82 | 箱根駅伝2区区間賞、3000mSC日本歴代2位(8分15秒62) | 2区(花の2区) |
| 野中恒亨 | 國學院大學(2年) | 28分17秒98 | 出雲・全日本で急成長を見せる國學院の若き主軸 | 3区 / 4区 |
| 太田蒼生 | 青山学院大学(4年) | 28分20秒63 | 箱根駅伝3区区間賞、大舞台で数々の名勝負を制覇 | 3区 / 4区 / 2区 |
| 青木瑠郁 | 國學院大學(3年) | 28分22秒09 | 出雲駅伝制覇の立役者、三大駅伝すべてで安定快走 | 1区 / 3区 |
| 伊藤蒼唯 | 駒澤大学(3年) | 28分28秒15 | 箱根駅伝6区山下り区間賞、復路の絶対的スペシャリスト | 6区(山下り)/ 3区 |
| 山川拓馬 | 駒澤大学(3年) | 28分36秒82 | 全日本8区区間賞、箱根4区・5区適性を持つ万能型 | 4区 / 5区(山上り) |
| 折田壮太 | 青山学院大学(1年) | 28分48秒(※5000m 13分28秒78) | 高校5000m歴代2位、全国高校駅伝1区好走の怪物ルーキー | 1区 / 3区 / 4区 |
27分台〜28分前半のハイレベルなタイム序列
現在、学生長距離界のタイム水準は歴史的な高速化を遂げています。かつては「10000m 28分台」を出せば全国区の超エースと称えられましたが、今や ** 27分台を持つランナーが複数大学に存在 ** し、強豪校では「10000m 28分台前半」をチーム内に10人以上揃えることが優勝への最低条件となりつつあります。
27分20秒台〜30秒台のタイムを持つキムタイ選手や佐藤圭汰選手、篠原倖太朗選手らは、実業団のトップ選手や日本代表クラスと互角以上に渡り合えるスピードを誇ります。彼らが先頭集団でレースを引っ張る展開になれば、従来の区間記録を大きく塗り替えるハイペースバトルが必至となります。
※陸上競技の歴代公認記録やスピードの指標については、こちらの総合ランキング記事でも詳しく解説しています。
→ 陸上公認記録の歴代日本記録・世界記録ランキング一覧まとめ
トラックのスピード記録と箱根のロード適性の違い
ただし、駅伝ファンなら誰もが知る通り、 ** 「トラックの10000m自己ベスト」がそのまま箱根駅伝の順位に直結するわけではありません ** 。ここが箱根駅伝の奥深く、面白いところです。
トラック競技と箱根路の間には、以下のような決定的な違いが存在します:
- 走行距離の倍増:トラックの10000m(10km)に対し、箱根駅伝の各区間は約21km〜23kmと2倍以上の距離があります。15km以降に襲いかかる筋肉の疲労やエネルギー切れに耐えうる「筋持久力」が必須です。
- 高低差と路面の硬さ:硬いアスファルトロードは足腰への衝撃が大きく、さらに箱根特有の上り坂・下り坂が脚力を容赦なく削ります。特に5区(山上り)と6区(山下り)は、平地のトラック走力とは全く異なる専用の筋肉と技術が求められます。
- 気象条件と単独走の能力:冷え込む朝のスタート、吹き荒れるビル風や海風、芦ノ湖の氷点下に近い冷気など、環境への適応力が問われます。さらに集団ではなく1人でペースを刻む「単独走」の走破力がないと、前後の差を詰めることはできません。
たとえば青山学院大の太田蒼生選手のように、トラックの公認記録は28分20秒台であっても、20km超のロードになると27分台の選手を圧倒するケースが多々あります。トラックのスピードとロード適性の融合こそが、箱根路で真のエースと呼ばれるための絶対条件なのです。
勝負を分ける主要区間のエントリー予想とレース展開
箱根駅伝は、往路5区間(107.5km)、復路5区間(109.6km)の合計10区間で争われます。それぞれの区間が持つ地形的特徴と役割を把握しておくと、観戦の楽しさが何倍にも広がります。
| 区間 | コース区間 | 距離 | 高低差・特徴 | 区間の重要性と役割 |
|---|---|---|---|---|
| 1区 | 大手町 → 鶴見 | 21.3km | ほぼ平坦(六郷橋あり) | 往路の滑り出し。スローペースからの牽制か、ハイペース脱落戦かの駆け引き |
| 2区 | 鶴見 → 戸塚 | 23.1km | 権太坂、戸塚の壁(難所) | 「花の2区」。各校のエースが直接対決する最長・最重要区間 |
| 3区 | 戸塚 → 平塚 | 21.4km | 遊行寺坂下り、湘南海岸 | エース級が投入されるスピード区間。富士山と湘南の海風を受ける激戦区 |
| 4区 | 平塚 → 小田原 | 20.9km | 小刻みなアップダウン | 山上り5区へのタスキリレーに向けた順位押し上げ・リード拡大の重要区間 |
| 5区 | 小田原 → 箱根・芦ノ湖 | 20.8km | 標高差864mの急峻な上り | 「山上り5区」。天下の険。往路優勝と総合優勝の行方を決定づける大一番 |
| 6区 | 箱根・芦ノ湖 → 小田原 | 20.8km | 急激な下り坂(標高差864m) | 「山下り6区」。早朝の極寒から時速25kmで下る。脚への凄まじい衝撃 |
| 7区 | 小田原 → 平塚 | 21.3km | 気温上昇、小刻みな坂 | 復路の序盤。冷気から日差しへの体感変化に耐え、リードを広げる区間 |
| 8区 | 平塚 → 戸塚 | 21.4km | 遊行寺の坂(名物上り坂) | 終盤の難所「遊行寺坂」で足が止まる選手多数。脱水・ブレーキ注意のタフ区間 |
| 9区 | 戸塚 → 鶴見 | 23.1km | 復路最長、権太坂下り | 「復路のエース区間」。繰り上げスタートの恐怖とシード権争いの大激戦 |
| 10区 | 鶴見 → 大手町 | 23.0km | ビル風、都会の直線 | 歓喜のアンカー。優勝テープとシード権獲得(10位以内)をかけた最後の死闘 |
エースが激突する最重要区間「花の2区」の走破力対決
全10区間のなかで最も注目を集めるのが、各大学の看板エースが激突する ** 「花の2区(23.1km)」 ** です。
鶴見中継所から戸塚中継所までのコースには、中盤に待ち構える「権太坂」、そしてラスト3km地点に立ちはだかる「戸塚の壁(急な上り坂)」という2大難所が存在します。平坦なロードをハイペースで駆け抜けた疲労が極限に達した状態で急坂を駆け上がらなければならず、精神力とスタミナが容赦なく試されます。
今大会の2区エントリー予想では、以下の超豪華な顔ぶれによる直接対決が濃厚視されています:
- 黒田朝日(青山学院大):前回2区区間賞のディフェンディングチャンピオン。上り坂での強さは実証済み。
- 平林清澄(國學院大):初マラソン日本最高記録保持者。23.1kmの距離を最も得意とするロードの鬼。
- 佐藤圭汰 または 篠原倖太朗(駒澤大):世界規格のスピードを誇る佐藤選手か、安定感抜群の主将・篠原選手か。駒澤の采配が注目されます。
- 山口智規(早稲田大):学生屈指の走力を持つ早稲田の柱。積極果敢な走りで上位集団を脅かします。
- ヴィクター・キムタイ(城西大):驚異の27分23秒を持つ快速留学生。数人抜きの猛追が見どころ。
この2区でトップに立った大学、あるいはトップと数十秒以内の好位置をキープした大学が、往路優勝への主導権を握ることになります。
往路優勝を左右する天下の険「山上り5区」のスペシャリスト
箱根駅伝の勝敗を最も劇的に動かす区間が、小田原中継所から芦ノ湖ゴールへと駆け上がる ** 「山上り5区(20.8km)」 ** です。
標高十数メートルの小田原から、標高874mの国道1号最高地点まで一気に駆け上がるコースレイアウトは過酷を極めます。箱根湯本を過ぎると傾斜が一気に険しくなり、ヘアピンカーブが連続する「函嶺洞門」周辺から大平台、宮ノ下、小涌園、そして恵明学園前へと続く急勾配は、平地の走力差を簡単に1分〜2分ひっくり返してしまう魔力を持っています。
過去にも「山の神」と称された名ランナーたちが数々の伝説を打ち立ててきましたが、今大会の5区でもスペシャリストたちの走りに注目が集まります。登坂力に定評のある創価大の ** 吉田響選手 ** や、駒澤大の ** 山川拓馬選手 ** 、そして青山学院大の山上り要員がどのようなタイムを刻むかによって、芦ノ湖での往路ゴール順位が大きく変動します。
朝の芦ノ湖から急降下する「山下り6区」のスピード勝負
復路のスタートを告げるのが、標高723mの芦ノ湖畔から小田原中継所へと駆け下りる ** 「山下り6区(20.8km)」 ** です。
早朝の凍てつく寒さのなかスタートし、最初の約4.5kmの上りを越えると、残り約16kmは急激な下り坂が続きます。ランナーの走行速度は時速25km近くに達し、カーブを曲がるたびに体重の数倍に達する衝撃が太ももの前部筋肉(大腿四頭筋)へと叩きつけられます。小田原中継所手前の平坦な3kmに差し掛かる頃には脚が完全に痙攣・硬直してしまう選手も少なくありません。
この過酷な6区において、前回区間賞を獲得した駒澤大の ** 伊藤蒼唯選手 ** の存在は圧倒的なアドバンテージです。下り坂の恐怖に打ち勝ち、冷気の中で研ぎ澄まされたコーナリング技術を見せるスペシャリストの走りが、復路のスタートダッシュを決定づけます。
大手町への歓喜のゴール!復路7区〜10区の総合力対決
復路の勝負は、山を降りた小田原からの7区〜10区で「大学の総合力(選手層の厚み)」を賭けた総力戦へと突入します。
- 7区・8区の継走:7区は日差しによる気温上昇との戦い、8区は終盤に待ち構える「遊行寺の坂」が最大の難所です。ここで控えに回っていた実力派の上級生や急成長中の下級生がどれだけ粘れるかが、首位争い・シード権争いの命運を分けます。
- 9区(復路のエース区間・23.1km):2区の逆コースを走る復路最長区間。各校の準エース級やキャプテン経験者が配置され、前を追う猛追劇や、後続とのタイム差を広げる決定的な走りが生まれます。また、鶴見中継所での「繰り上げスタート」を回避するためのタスキリレーのドラマも涙を誘います。
- 10区(歓喜のアンカー・23.0km):東京・大手町の読売新聞社前ゴールを目指す最終区間。ビル風が吹き抜けるオフィス街を駆け抜け、優勝テープを切る歓喜の瞬間、そして10位(シード権獲得)と11位(予選会回り)を分ける数秒のデッドヒートが繰り広げられます。
まとめ:新春の箱根路で輝く注目ランナーたちの激闘を見届けよう
今大会の箱根駅伝は、 ** 青山学院大学・駒澤大学・國學院大學の「3強」によるハイレベルな頂上決戦** を軸に、各校のエースたちが誇りをかけて襷を繋ぐ歴史的な大会となります。
最後に、今大会の観戦を100倍楽しむための重要ポイントを振り返りましょう:
- 10000m 27分台〜28分一桁のエース対決:黒田朝日、佐藤圭汰、平林清澄ら世代トップランナーが激突する「花の2区」は瞬き厳禁!
- トラックのタイムとロード適性の違い:太田蒼生のようにロード本番で真価を発揮する勝負強いランナーの走りに注目。
- 勝負を決定づける特殊区間:往路優勝を左右する「山上り5区」と復路開幕ダッシュの「山下り6区」でドラマが生まれる。
- 10区間全員の総合力:7区〜10区の復路で選手層の厚みを発揮した大学が、最終的に大手町で歓喜の総合優勝を掴み取る。
新春の箱根路を駆け抜ける若きランナーたちの熱い走りと、汗と涙が染み込んだ襷の物語を、ぜひテレビ中継や沿道から全力で応援しましょう!

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